相続手続きを楽にする便利な書類法定相続情報一覧図とは
法定相続情報一覧図とは、相続が発生した際に、被相続人(亡くなった方)の戸籍や住民票などを基に、誰が相続人であるのかを一覧化した図面のことを指します。法務局(登記所)に申請して交付を受けることができ、正式な公的書類として利用できます。
従来は、銀行や不動産会社などで相続手続きを行うたびに、分厚い戸籍謄本の束を提出する必要がありました。しかし、法定相続情報一覧図を利用すれば、戸籍一式の代わりに必要な場面でこの一覧図を提出するだけで済み、手続きが大幅に簡略化されます。
法定相続情報一覧図が使える相続手続き
法定相続情報一覧図は、以下のような相続関連の手続きで活用できます。
- 不動産の相続登記
- 銀行・信用金庫などの預貯金の解約や名義変更
- 証券会社での株式・投資信託の名義変更
- 自動車の名義変更
- 保険金の請求
- 郵便局での貯金払い戻し
このように、ほとんどの相続関連の手続きに対応しており、提出書類の効率化に役立ちます。
法定相続情報一覧図を取得するメリット
法定相続情報一覧図を取得するメリットは数多くあります。
- 何度でも何枚でも無料で交付を受けられる
- 戸籍謄本の原本を繰り返し提出する必要がない
- 相続手続きの時間短縮と負担軽減につながる
- 書類の紛失や破損のリスクを減らせる
特に、複数の銀行や証券会社で手続きを進める場合、何通もの戸籍を揃えるのは大きな負担です。その点、法定相続情報一覧図があれば効率的に進められます。
法定相続情報一覧図を取得できる人
法定相続情報一覧図を申請できるのは、基本的に相続人本人です。ただし、司法書士や弁護士などの専門家に依頼することも可能です。
代理人が申請する場合には、相続人本人からの委任状が必要となります。仕事や体調の都合で手続きが難しい方は、司法書士等に依頼するケースが一般的です。
法定相続情報一覧図の取得費用と交付期間
法定相続情報一覧図の交付自体には費用はかかりません。ただし、戸籍謄本や除籍謄本、住民票の取得には手数料がかかるのに比べてとても便利な制度です。しかも、必要な枚数だけ何枚でも取得できます。
交付期間は、申請からおおむね1〜2週間程度が一般的です。ただし、提出書類に不備があると補正になり、追加書類を法務局に持ち込んだりするために、さらに時間がかかることもあるため、慎重に準備することが大切です。
法定相続情報一覧図の有効期限
法定相続情報一覧図には法律上の有効期限は定められていません。しかし、実務上は発行から数年もの期間が空いてしまうと取り直しを求められることも多いです。
特に銀行や証券会社などでは「最新のもの」を提出するよう案内される場合があり、古い一覧図は受け付けてもらえない可能性があるため注意が必要です。
また、取得した時から、相続人の氏名や住所に変更が生じた場合なども新たに取得が必要になるケースがあります。
法定相続情報一覧図の取得までの流れ
必要書類を準備する
法定相続情報一覧図を取得するためには、次のような書類を集める必要があります。
必ず用意する書類
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍(除籍、改製原戸籍を含む)
- 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
- 相続人全員の現在戸籍
- 申請者(相続人)の住民票または運転免許証やマイナンバーカードの写し
- 申請書(後述)
必要となる可能性がある書類
- 相続人の中に死亡している方がいる場合、その方の戸籍謄本
- 法定相続情報一覧図に記載する住所を証明する住民票(法定相続情報一覧図に住所を記載する場合のみ)
- 委任状(司法書士など代理人が申請する場合)
これらを漏れなく準備することで、申請がスムーズに進みます。
法定相続情報一覧図を作成する
ここが1番重要な作業であり、大変な作業でもあります。
必要書類を基に、被相続人と相続人の関係を表した一覧図を作成します。
一覧図には、被相続人の氏名・生年月日・死亡日や、相続人の続柄・氏名・生年月日などが記載されます。
書式は法務局の公式サイトからダウンロード可能ですが、内容に誤りがあると受理されませんので注意が必要です。
申請書を記入して管轄の登記所へ申出する
最後に、法務局に備え付けの法定相続情報一覧図の交付申請書を記入し(Webからダウンロードも可能)、必要書類と一覧図を添えて管轄の法務局へ提出します。郵送申請も可能です。不備があるとやり取りに時間がかかるため、司法書士等の専門家に依頼する人も多いです。
申請が受理されると、法定相続情報一覧図の写しが交付されます。必要に応じて複数部の交付を受けることも可能です。
まとめ法定相続情報一覧図をつかって相続手続きを時短しよう
法定相続情報一覧図は、相続手続きを効率化し、相続人の負担を大幅に減らすことができる非常に便利な書類です。費用がかからず、複数の手続きで使い回しができる点も大きなメリットといえます。
最も多い活用例が、複数の銀行の手続きを同時進行で進めるときです。また、遠方の銀行や証券会社の本店に郵送で手続きを進めるときは、いったん戸籍一式を郵送しなければいけないため、返却されるまで他の手続きを進めることができませんが、戸籍の代わりに法定相続情報一覧図を提出することで、複数の手続きを同時にスムーズに進めることができて便利です。
ただし、必要書類の収集や一覧図の作成には専門的な知識が求められる場合もあります。平日忙しい方や相続手続きをスムーズに進めたい方は、司法書士等に相談してサポートを受けると安心です。
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