自己破産をすることで受ける人生のペナルティとは?

借金の返済が困難になったとき、最終的な救済手段として選ばれるのが「自己破産」です。自己破産を申し立て、裁判所から免責許可を受ければ、原則として借金の返済義務から解放されます。つまり、借金が全て免除されます。これは生活再建のために非常に有効な手段ですが、「自己破産をすると一生ペナルティが残るのではないか」と不安に思う方も少なくありません。
結論からいえば、自己破産に伴うペナルティは確かに存在しますが、すべてが一生続くわけではありません。法律で定められた制限や社会的影響の多くは期間限定であり、適切に理解して対処すれば再スタートは十分可能です。本記事では、自己破産によって受けるペナルティについて、自己破産の専門家の視点から詳しく解説していきます。

債務整理の最終手段?自己破産をするとはどういう事か

自己破産とは、債務者が支払不能の状態に陥った場合に、裁判所へ申立てを行い、財産を清算することで債務の免除(免責)を受ける手続きです。免責が確定すれば、借金の返済義務は原則としてなくなり、借金地獄から解放されます。
よく、債務整理を手掛ける司法書士や弁護士事務所のCMで「あなたの借金を全額免除にできます」というフレーズを見かけますが、それがまさに「自己破産」のことです。
ただし、この「借金を帳消しにできる」という強力な効果がある反面、一定の制約やデメリットが付随するため、それらを「自己破産のペナルティ」と呼ぶことがあります。

自己破産による主なペナルティ

自己破産を行うと、以下のような制約や不利益が発生します。

1.資産の処分

自己破産では、原則として20万円以上の価値がある財産を手放す必要があります。具体的には、預貯金や不動産、車、貴金属などが換価対象となります。ただし、99万円以下の現金や生活必需品などは差し押さえられず、最低限の生活は守られる仕組みになっています。つまり、換金価値のある自動車を所有している場合や、居住用不動産を所有しているような場合には、基本的にそれらを処分する必要が出てきます。

2.一定期間の職業制限

破産手続開始決定から免責許可確定までの間、弁護士や司法書士などの士業、宅建業者、保険募集人、警備職など他人の資産や金銭を守る一部の資格職には就けません。これは「資格制限」と呼ばれるもので、免責が下りれば解除されます。つまり、生涯続くものではなく、期間限定の制約に過ぎません。極端な話をすれば、免責が確定した後に、司法試験を受けて弁護士になることも可能なのです。

3.官報への掲載

自己破産をすると、官報に名前や住所が掲載されます。官報というのは政府の新聞のようなもので、なかなか聞きなれない方も多いかと思います。公告と聞くと会社や知人に知られてしまうのではないかと、これを心配する方も多いですが、一般の人が官報を閲覧する機会は少なく、日常生活に直ちに大きな影響を与えることはほとんどありません。官報を逐一チェックしている人はほとんどいないのが実情です。

4.信用情報(ブラックリスト)への登録

自己破産をすると、信用情報機関に事故情報として登録されます。俗に「ブラックリスト入り」と呼ばれるものです。これは、避けては通れないもので、自己破産の1番のペナルティと言っても過言ではありません。この情報は5年から10年程度残るため、その間は新たなローンやクレジットカードの利用が難しくなります。しかし、これは自己破産に限らず、任意整理や個人再生など他の債務整理の手段を取ったとしても同じようにペナルティが生じます。
自己破産によって借金を免除される代わりに、数年間の間は現金生活を余儀なくされます。これは考え方によっては、今までの借り癖を治すための良いリハビリ期間とも言えます。

5.保証人への影響

自己破産をして債務が免責されても、連帯保証人がいる場合には保証人が代わりに返済を求められます。自己破産を考えたときには、まず自分の借金の保証人になっている人がいないかよく確認してみてください。保証人がいるケースで、安易に自己破産してしまうと、保証人に一括請求がいってしまい、保証人との関係悪化につながる可能性があるので注意が必要です。

自己破産による社会的・心理的ペナルティ

法的な制限以外にも、自己破産には社会的・心理的な影響があります。
まず、家族や周囲に知られてしまう可能性があることです。破産手続では郵送物が家庭に届いたり、場合によっては同居の家族の公的書類などを提出したり、官報に掲載されたりするため、家族に秘密に進めるのは難しいケースもあります。また、保証人がいる場合には必然的に知られてしまいます。
次に、心理的な負担も無視できません。「破産者」という言葉に対するネガティブなイメージから、自己嫌悪や罪悪感を抱く方も少なくありません。これを「人生のペナルティ」と感じる人も多いでしょう。特に責任感の強い人はこのような精神的負担を抱えやすい傾向にあります。
しかし、これらは法律上の制裁ではなく、社会的な偏見や本人の心理的問題にすぎません。破産法の目的は債務者の経済的再生にあり、罰を与えることではないのです。

自己破産によるペナルティは一生ついて回るのか?

多くの人が誤解している点として、「自己破産をすると一生ローンが組めない」「一生社会的制裁を受ける」「人生の終わり」といったものがあります。しかし実際には、法律上の制限はほとんどが期間限定です。資格制限は免責確定とともに解消され、信用情報の登録も一定期間が過ぎれば抹消されます。つまり、法律上のペナルティは時間が解決してくれます。
もちろん、自己破産の事実は裁判所に記録として残り、再び自己破産を申し立てる場合には過去の破産歴が影響します。しかし、日常生活や就労において「一生制約を受け続ける」ということはありません。

自己破産を選択する前に考えるべき事

自己破産は強力な救済手段ですが、誰にでも勧められるわけではありません。住宅や車を手放したくない場合や、保証人に迷惑をかけたくない場合には、任意整理や個人再生といった他の債務整理手続を検討すべきです。安易に「借金免除」と言いう事だけに飛びつくのは危険であり、専門家と一緒にご自身に最適な債務整理の手段を探すことが重要です。
また、自己破産を選択する場合には、裁判所の手続きになるため、弁護士や司法書士など専門家に相談することが不可欠です。専門家は、免責不許可事由に当たらないか、生活再建に向けてどの手続が最適かを判断してくれます。

まとめ

自己破産には確かにペナルティがあります。資産の処分や一時的な資格制限、信用情報への登録といった法的制約、さらには社会的な視線や心理的負担なども伴います。しかし、それらの多くは一生続くものではなく、期間限定で解除されるものです。
むしろ、自己破産は借金を整理して生活を立て直すために用意された制度であり、決して人生を終わらせるものではありません。ペナルティを正しく理解し、適切な専門家の助言を受けることで、自己破産後も再スタートを切ることは十分可能です。
借金問題に悩んでいる方にとって、自己破産は最後の救済策であり、新しい人生の第一歩となり得ます。もし返済の見通しが立たずに苦しんでいるのであれば、「ペナルティが怖い」と思い込みで避けるのではなく、まずは法律専門家に相談することをお勧めします。

債務整理に関連する記事

二度目の自己破産は可能なのか?の画像

二度目の自己破産は可能なのか?

「昔に自己破産したことあるんだけど、また借金の返済ができなくなってしまった。。。」
「自己破産ってもう一度できるの?」
このようなお悩みを抱えている方のために、二度目以降の自己破産の可否について債...