相続が発生し、相続人同士で遺産分割協議をすることになったが、1人が外国の人と結婚して海外に住んでいるようなケースや、相続人の中に海外の勤務先で働いている人がいるケースなど、そういう時はどうやって遺産分割協議を進めればいいのでしょうか。
この記事では、相続人が海外にいる場合の、遺産分割の進め方や、注意点についてお話しします。これから遺産分割協議を進めていこうという方は参考にしてください。
相続人が海外にいても遺産分割協議に参加しなければならない
近年のグローバル化によって、海外に居住する相続人がいても珍しくありません。相続が発生した場合、相続人が海外に居住していることもあります。この場合でも、被相続人の遺産分割については国内法である民法が適用されますから、相続人全員が国内にいる場合の遺産分割の場合と同様、相続人全員が遺産分割協議に参加しなければなりません。
もし、海外にいるという理由だけで、その海外にいる相続人を除外した遺産分割協議を行っても、それは無効と扱われてしまいます。
相続人が海外にいる場合の遺産分割における必要書類
印鑑証明に代わる「サイン証明」
海外にいる相続人も含めて遺産分割協議を行って、もし協議がまとまれば、遺産分割協議書を作成します。この遺産分割協議書には、相続人全員の署名と、実印の押印、そして印鑑証明書の添付が必要です。
しかし、海外には、台湾や韓国を除いて、印鑑証明書や住民票の制度がそもそも存在しません。
つまり、海外にいる相続人は、遺産分割協議書に実印を押して印鑑証明書を添付するということができません。このままでは、相続する財産に不動産があっても、その登記名義を変更する手続きを進めることができません。
この点、海外では、実印の代わりに署名(サイン)で対応しますので、海外にいる相続人は、遺産分割協議書に署名を行います。そして、印鑑証明書の代わりに、日本領事館等の在外公館に出向いて遺産分割協議書に相続人が署名した旨の証明(サイン証明)をもらい、このサイン証明を遺産分割協議書に添付します。
このような手続きの都合上、遺産分割協議書に署名するのは、領事館等で行う必要があります。
住民票に代わる「在留証明書」
相続財産に不動産がある場合、その不動産の相続登記手続きを遺産分割協議書に基づいて行います。その際、添付書類として住民票が必要になります。
国内にいる相続人の住所を証明するには、戸籍の附票または住民票を使います。在外邦人は、国内に本籍が残っていたとしても、戸籍の附票にも住民票にも、居住する外国の住所は記載されていません。そこで、住所を証明する書類として、「在留証明書」が必要となります。
この証明書は、現地の日本領事館にパスポートや運転免許証、光熱費の請求書など、現住所にいつから居住しているのかを証明できる書類を提示して申請します。
戸籍に代わる「相続証明書」
海外に居住する相続人の中には、現地の国民として帰化した人がいるケースもあります。そのような人でも、相続人であることを証明する必要があります。日本人であれば、相続人であることを戸籍で証明できますが、外国人には戸籍がありません。
そこで、戸籍に代わって「相続証明書」が必要となります。この相続証明書は、被相続人が死亡して相続が開始したことや、登記申請人が真正な被相続人の相続人であること、その他に、相続人がほかには存在しないことを明らかにする書類の事です。
これは、相続証明書というrタイトルの書面ではなく、通常は出生証明書、婚姻証明書、死亡証明書などが該当します。
相続人が海外にいるが連絡がつかず所在不明の場合
相続人の中には、海外にいるが、その海外の住所が分からず、他の相続人とも音信不通で、しかも国内に財産管理を任された者を置いていない人がいます。
この場合でも相続人としての権利はありますから、裁判所に不在者財産管理人選任の申立てをして、その不在者財産管理人が、遺産分割協議に参加することになります。
遺産分割協議がまとまらなければ、遺産分割調停の申立てをしますが、その調停の当事者も、不在者財産管理人となります。
まとめ
相続人が海外にいる場合には国内にいる相続人とは少し違った手続きや書類が必要になります。ただし、相続人が海外にいたとしても遺産分割の手続きは進めることができるので安心してください。
どうしても、郵便の関係や、手続きのイレギュラー性から通常の遺産分割協議よりも難航することが多いです。
名古屋市港区の司法書士ローワン綜合法務事務所では、海外に相続人がいる場合の相続登記や遺産分割協議書の作成などのご相談を承っております。お気軽にご相談ください。
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