被相続人の遺産の中から、相続人名義の預金口座が見つかった場合、被相続人の相続財産として扱うのか、相続人の固有財産として扱うのか判断に迷うことがあるかもしれません。
相続人名義の預金口座の扱いについて、2つの視点でご説明します。
遺産分割と名義預金の関係
預金名義とは?
かつては他人名義での口座開設が容易であったため、父親が子に無断で子名義の口座を開設し、預金をしておくような事態がしばしば見受けられました。これを「名義預金」といいます。
このように、家族名義の預金でも実質的に被相続人に帰属していたと評価できる場合はあり、その場合には当該預金は相続財産として遺産分割の対象となります。したがって、名義人の認識や預金の管理状況、実際の預金出捐者などを考慮しつつ、当該預金の実質的な預金者が誰であったかを相続人間で協議する必要があります。
名義預金の取扱い
名義預金を相続でどのように取扱うかについて具体的には、下記の3つの考え方があります。いずれの対処をするか、相続人間で協議して決めていくことになります。
① 実質的に被相続人の預金として扱って遺産分割の対象とする
② 名義人の預金として扱い、遺産分割の対象とはしないが、特別受益として持戻しの対象とする
③ 名義人の預金として扱い、遺産分割の対象とせず、特別受益としても扱わない
相続税課税と名義預金の関係
名義預金の取扱い
相続税との関係でも。家族名義の預金が実質的に被相続人に帰属していたと評価できる場合には、相続財産として相続税の課税対象となります。
これは、相続人間の協議とは別個に国税庁の判断として行われるものであり、たとえ相続人間で上記の②や③の扱いとすることで合意したとしても、相続税の課税対象となる場合があります。
名義預金と生前贈与
名義預金の存在を相続人も知らなかった場合には致し方ないとしても、相続税対策として生前贈与をしていたつもりが、相続の場面で名義預金と国税庁から判定されてしまうようでは相続税対策の意味をなさないので、そのような事態を回避する必要があります。
生前贈与を行う際の注意点
贈与をしたことの証拠を残す
贈与をした時点で、贈与者と受贈者の意思を確認するものと、資金の移動が確認できる証拠を残しておくとよいです。たとえば、贈与契約書や銀行振込による資金移動などです。
注意点として、贈与も法律行為であり、受贈者側にも一定の判断能力が要求されます。したがって、未成年の子や孫に対する贈与は、その判断能力次第では、そもそも贈与を受けること自体を理解できていなかったとして贈与が無効と判断される可能性があります。逆を言えば、この点の判断能力さえあれば、未成年者であっても有効に贈与を受けることは可能です。
その場合にも、生前贈与を行いたければ、親権者が受贈者たる子の法定代理人として贈与者と贈与契約を結ぶしかありません。
贈与された財産は受贈者が自分で管理する
子が贈与として預金を受け取った場合には、必ず子が自分の通帳や印鑑を管理しましょう。通帳に登録する印鑑は贈与者である親とは別の子自身の印鑑である方が望ましいでしょう。
贈与税を納める場合には、受贈者が納付する
年間110万円以上を贈与によって受け取った場合には、贈与税の申告が必要です。贈与税は受贈者が納付するものですので、この場合には必ず受贈者である子が自分の資金から納付するようにしましょう。
親が代わりに贈与税を納付してしまった場合には、その金額も贈与とみなされてしまうことになります。
弊所では、相続や遺産分割に関するご相談を初回無料で承っております。相続のご相談は司法書士ローワン綜合法務事務所までお気軽にご連絡ください。相続税に強い税理士や弁護士とも提携しワンストップサービスにて提供いたします。
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監修者 :中瀬 雄太
司法書士・行政書士・海事代理士
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・平成28年 行政書士登録
・平成29年 海事代理士登録
・令和3年 司法書士登録